万博展示プロジェクト
アルミ組子細工
のランプ

伝統に学び、技術を磨き、
組み合わせから新しい価値を創る。

二つの企業が未来を見据え、
ともに生み出した“あかり”です。

地域貢献と技術発展を目指し、「オープンファクトリー」の取り組みを継続しています。
この取り組みにより、地域に根ざした技術力と働く風土を発信し、若手の育成や技術の発展の場として工場を
オープンにし、見学者を迎えています。この活動がきっかけとなり、万博での展示オファーをいただきました。
今回の万博展示に向けて、当社は新たな挑戦として、伝統的な和紋様を切削技術で表現することにしました。
そのきっかけとなったのは、京都で見かけた美しい組子細工の紋様です。
私たちは、精密な加工技術を駆使して、アルミという金属でこの伝統的な紋様を再現することに取り組みました。

作品のテーマ

「先端工芸」

伝統産業と先端産業が共存する京都のものづくり企業2社が、
日本の伝統工芸と先端産業を支える精密加工技術を掛け合わせて
新しい価値を創り出す。

伝統と先端技術の融合

⽇本の伝統⼯芸である組⼦細⼯は、⽊を精巧に組み合わせて美しい幾何学模様を⽣み出す技法です。通常は⽊材を⽤いますが、これを⾦属、特にアルミニウムで再現することは⾮常に斬新で⾼い技術⼒が求められます。アルミニウムは⽊材と⽐べて硬く、加⼯が難しい素材です。それを組⼦細⼯の繊細な模様に仕上げるには、精密な切削技術や⾼度な設計技術が必要です。

精密な制作プロセス

例えば、0.1ミリ単位の精度で部材を切り出し、隙間なく組み上げる技術は、現代の先端加⼯技術と伝統の融合そのものです。この挑戦は、伝統⼯芸の美しさを新しい素材で表現することで、組⼦細⼯の可能性を広げ、現代的なデザインや建築に応⽤できる点で画期的なものです。さらに、アルミニウムの軽量性や耐久性により、従来の⽊製組⼦では難しかった⼤型作品や屋外使⽤も可能になります。

こうした⾰新は、伝統を尊重しつつ新たな価値を⽣み出す、⽇本のもの
づくりの精神を象徴しています。

様々な物や記憶を
閉じ込めるレジン

京都で古来から受け継がれている産業の手漉き和紙である「黒谷和紙」。この古くからある伝統的技術の結晶である「和紙」と近年木材とレジンを組み合わせたレジンテーブルなどで注目されている「レジン」を組み合わせ、ただ和紙を挟み込み硬化させるのではなく、和紙の素材感・質感を感じることができるような形で硬化させることで、今までにない「和紙」+「レジン」の表現を提案しております。

作品の特徴

① 組子細工と精密切削

906個のアルミニウム合⾦製の部品で構成されたシェードは、先端産業で使われている⾦属の精密加⼯技術で作られています。その精度±1/1000ミリメートル単位。⾼精度に仕上げられた部品によって成り⽴つ緻密な幾何学模様は、ネジや接着剤を使⽤せず、互いに押し合う⼒の均衡とミクロン単位の嵌め合わせによってその形状を保っています。

② 黒谷和紙とレジン

光を温かく拡散する和紙は京都府綾部市の⿊⾕和紙。それを覆うレジンは、近年、従来の接着剤としての⽤途ではなく、アクセサリーやアートに活⽤され始めた新技術。紙や布、⾦箔などを封⼊し、今までに無い新たな価値観を提案する技術です。

当初レジンで8面体を作り照明フードにする予定でしたが、今までにない試みはできないのか?との思いから、レジンで照明の筒形を製作、土台に使用するレジンも和紙の素材である「楮(こうぞ)」が挟んであるのでなく、レジンに浮遊するような表現ができないのか何度も検討・試作を重ね黒谷和紙らしさを残し新たな表現を見せた、伝統技術+近代技術の新たな価値を提案することができます。

③ 手作業による微調整

作品の組み⽴ては全て⼿作業で⾏われます。⼀つひとつの部品を丁寧に組み合わせて形を整えていくのですが、その過程で発⽣する歪みや偏りを職⼈の⼿の感覚で微調整しています。⼀⾒同じ形の部品が組み合わさっているように⾒えますが、よく⾒ると0.1㎜だけ⼤きい部品が部分的に使われていたりします。

④もったいない精神

ランプシェードを構成する部材の90%は、機械部品の製造過程で発⽣した端材や不良品から取り出しています。原材料を無駄なく価値あるものにしたいという職⼈の想いが込められています。

作品の仕様

  • 直径:

    280㎜

  • 高さ:

    430㎜

  • 材質:

    アルミニウム合金 (シェード部分)
    レジン (台座・光源部)
    和紙 (黒谷和紙)

  • 製作期間:

    5ヵ月

ストーリー

福知山市と京丹後市の2社が
タッグを組んで作り上げた
未来志向のプロダクト

機械加⼯と製⽸を主⼒事業とする2社は、20年以上にわたって産業機械や⾞両メーカーのサプライヤーとして協⼒関係を築いてきました。

世代交代やコロナ禍など、内外の環境が⼤きく揺れ動く中で、私たちはあらためて「この先、企業としてどう在るべきか」「これからのモノづくりに、どんな可能性があるのか」を真剣に⾒つめ直すことになりました。

⻑年培ってきた技術と、「良いものをつくりたい」というものづくりへの志。

それらを原点に、これまでの枠組みにとらわれず、より広い分野に技術を展開していくことで、新しい価値が⽣み出せるのではないか――。
そうした想いのもと、私たちはそれぞれの得意技術を深化させると同時に、新たな技術との“化学反応”にも挑戦し、独⾃のプロダクトづくりを始めました。

「いつか⼀緒に、何かおもしろいことをやろう」
そう語り合ってきた私たちにとって、⼤阪・関⻄万博はまさにその約束を形にする絶好の機会でした。

これからの時代は、⼀社単独ではなく、異業種・異分野・異素材といった“組み合わせ”によってこそ、より⼤きな価値が⽣まれていくと私たちは信じています。
その先駆けとして、伝統⼯芸と先端技術を融合させた新たなプロダクトを共創しました。⽼若男⼥、誰もが思わず⾜を⽌め、近づいてみたくなるような――
精巧さと美しさ、そしてこれまでにない造形美を⽬指して、906個の精密なパーツと⾰新的なレジン造形技術を組み合わせ、

私たちの未来へのビジョンを、⼀つの“あかり”として形にしました。